筋肉痛とストレッチの関係性
結論をいうと、ストレッチには、筋肉痛を「予防」・「緩和」させる効果があります。
したがって、軽度の筋肉痛の場合には、通常通りストレッチを
行ってもいいのですが、伸ばすことであまりにも「痛み」を
感じる場合は、控えたほうがいいです。
<筋肉痛ってなに?>
激しい運動の後に発生する筋肉痛のことを
「遅発性筋痛:ちはつせいきんつう」といいます。
この筋肉痛は「伸張性の収縮負荷」が大きくかかった時に
起こりやすいと考えられています。
「伸張性の収縮負荷」とは、「引っ張られた状態で、
縮もうとする」動きのことです。
例としては
ダンベルを”下ろす”動き
階段を”降りる”動き
などがあります。
筋肉に負荷がかかると傷が付きます。
この傷が「炎症反応」を引き起こすと、ヒスタミン等の発痛物質が
活性化されて「痛み」を感じるようになります。
これが筋肉痛の痛みの原理の1つです。
<筋肉痛の予防になる?>
ではストレッチは、筋肉痛の「予防」になるのでしょうか。
過去の研究の中にマウスを用いて「筋損傷に対するストレッチの予防効果」
を検証している実験があります(Koh TJ,Brooks SV(2001))。
この実験では、刺激をを与える「2週間前」にストレッチングを
行ったグループは、行わなかったグループよりも
筋肉の損傷の割合が少なく
炎症反応(好中球やマクロファージの数)も少なかった
ことが確認されました。
また同じテーマを扱っている研究では、
実験の14日前
3日前
24時間前
1時間前
にストレッチングを実施し「ストレッチと筋肉痛の関係性」を
調べています。(Lockhart NC,Baar K,et al(2006))
こちらの実験においても、ストレッチをした群はストレッチを
しなかった群と比べて、筋損傷の割合が優位に「減少」
していることが確認されました。
すなわち、日常的・または運動前にストレッチを行うことで、
筋肉痛をある程度”予防”できることが分かったのです。
ストレッチで「伸びる準備」をしておくと、筋線維の
損傷を抑えられるということです。
<筋肉痛を軽減できる?>
このテーマに関しても、過去の研究が多数存在しています。
ある実験では、伸張性収縮負荷テストの24時間後、疼痛が生じている
ふくらはぎに対して30秒間のストレッチを実施しています(Reisman et al(2009))。
その結果、痛み閾値が優位に”減少”したことが明らかになりました。
ただし、反動をつけたり、痛みが大きくなるようなストレッチはNGです。
一部位あたり「15〜20秒程度」じっくり伸ばしていくことが大切です。
筋肉痛が緩和されるメカニズム
ストレッチによって筋肉痛が軽減する理由には、
未だ明確な結論は出ていません。
しかし、一般的に考えられている要因としては
代謝産物の分散
筋活動の抑制
という2点が挙げられています。
<①代謝産物の分散>
激しい運動を行うと、筋肉の中では様々な「代謝産物」が生じます。
エネルギーが無酸素的に分解された時に生じる
「乳酸」などもこの1つです。
この代謝産物が筋肉内に留まってしまうと、血流の流れが
滞りがちになり「痛み」を発生させてしまいます。
ストレッチは「血液の流れ」を促進できるので、
代謝産物を分散させることができます。
これによって、痛みが徐々に緩和されてくるわけです。
ここでは、「血流の促進」がポイントになります。
<②筋活動レベルの抑制>
筋肉は常に「筋電位」と呼ばれる電気信号(神経)の影響を受けています。
筋電位の高い状態が続くと、緊張や痙攣、
疲労や痛みにつながってしまいます。
激しい運動を行うと運動中だけでなく、運動終了後にも
高い筋電位の状態が続いてしまうことがあります。
ストレッチによる「伸ばされる刺激」には、この筋電位を
”リセット”する「リラクゼーション効果」があります。
運動後のクールダウンとしてストレッチを行うと、筋活動を抑制し、
痛み等を緩和することができると考えられています。
まとめると、筋肉痛を緩和するためのストレッチのポイントは
血液の流れを促進させること
筋肉活動をリセットすること
という2点です。
したがって、取り組むべきストレッチは「ゆっくりじわ〜っと筋肉を
伸ばしていくスタティックストレッチ」が中心となってきます。
伸ばす時間は1か所につき「15~20秒程度」
セット数は「2〜3セット程度」
が目安となります。
注意点としては、筋線維自体が損傷している場合もあるので、
強い伸び感が伴うもの・反動をつけて行うものは原則NGです。
強い筋肉痛の際には無理をせず、十分な栄養と
睡眠の確保を心がけることが先決です。
あくまで「気持ち良さ」を実感する範囲で、伸ばしていきましょう。